海外安全こぼれ話

2014.2.10
大日方和雄監事
眠りの差

海外に行くと思わぬ事に出会いびっくりしたり、困惑したり、楽しみはたえない。

1日の勤労を終え家に帰り家族と団らんする。やがて寝床に入るとすぐ眠りに誘い込まれる。脇に妻や子がいる、もうこれ以上何もいらない。そんな安楽な眠り。 

これは全くちがう眠りの話。ある日、外国の町を歩いている。そんな時、ひょんな事から現地の人が気安く話しかけてくる。名所を案内してやろう、と言う言葉に感激しながら、一緒にあちこち1,2時間歩き回る。名所説明の合間に、日本人が好きで、あなたと話が出来てとてもうれしい等とも言ってくれる。でもだんだん喉も渇いてきたし、疲れてもきた。そんな頃合い、その人が公園のベンチをさがし、缶ジュースを買ってきてくれ、その上親切にもプルをとってすすめてくれた。重ねての親切に感謝しながら、1口2口と飲む。と、そんなに疲れていたとは思わないのに急に眠気が差してくる。ここで寝ては失礼だと思うのだが、睡魔に負けてしまった。ふと目が覚める。ベッドの中にいる。ここは何処。ここは病院ですよ。下着姿で道路脇に転がっていたのが見つかり、病院につれてきたのです。睡眠薬が効いていたので医師が手当てをして覚醒できたのです。と言われびっくりして、ようやく眠る前のことを思い出したりする。

これは「睡眠薬強盗」とよばれる犯罪で、睡眠薬で眠らせ物を盗る手口である。半世紀近く前からアジアの大都会で発生していたのだが、最近はヨーロッパでも発生し始めた。

犯行のパターンは、睡眠薬入りの飲み物をだまして飲ませ、意識を失わせて金銭などを盗る、というものである。また、だましの手管は様々。土地の名所を案内し友達になる、研修に行くので日本事情の説明や日本語のあいさつを教えてもらいお礼までなどと飲み物を出す、日本とXX国との親善会合(実はでたらめ)に誘い両国に乾杯する、などなど人の気持ちを引いて液体を飲ませる。

海外の、とりわけ大都会では、見知らぬ者が気軽に近づいてくる時には何か下心があるに決まっている。ある時は金銭であり、ある時は貞操であり、予測できない危険な狙いをもっていると考えた方がよいのである。何事によらず、口に入れる物にはご用心あれ。