海外安全情報マニュアル

危険と隣り合わせの「自然体験旅行」

「日本にはない自然」を体験することを目的とする海外旅行者が増えております。それに伴い、慣れない自然環境の中での病気やチョットした油断・準備不足による事故も増加傾向にあります。楽しいはずの旅行中に急病や不慮の事故に遭遇することのないよう、渡航前には次のポイントを確認しておきましょう。

ポイント

  • 無理のない旅行日程を組み、旅行中も絶対無理をしない。(体調が悪いと感じたら、旅行日程を変更、または中止しても休養を取ることが大切です。特に高齢者の方は、疲労や食生活の変化から体調を崩すことが多いので注意しましょう)
  • 持病のある場合は、渡航前に医師の診断をうけ海外旅行が可能かどうか助言してもらう。旅行する場合、出来れば簡単な英語の診断書を作成してもらい携行するとよいでしょう。(なお、粉薬を携行する場合、麻薬類と誤解されことがあるので注意が必要です)
  • 特に心臓病や肺の病気をもつ場合は、高地や熱帯地への旅行はなるべく避けてください。
  • 旅行目的に合った海外旅行保険に必ず加入する。また、保険会社では海外の医療機関に関する情報をもっているので、事前に聞いておくことが大切です。

山での事故(登山、トレッキング)

どのような事故があるのか

・トレッキング、ブッシュ・ウォーキング、登山などで発生する事故には共通性があります。「高山病」「天候の急変などによる遭難」が最も多く、中には山賊(武装強盗集団)に襲われたケースもあります。
・地域的には、アフリカ、南西アジア、南・北アメリカの山岳地帯での疾病・事故が多く見られます。
・高山病は、高度環境への適応が不十分なために、呼吸困難、頭痛などが起こる症状で、意識障害を引き起こすこともあります。高山病は、海抜2,700メートル以上で発症するとされており、日本国内の山では滅多にかかることはありませんが、海外では、日本でハイキング気分のようなところでも、実際は海抜3,000~5,000メートルを歩いていることがありますので、知らない間に高山病になっているというケースもあります。

●指定された遊歩道やルート以外は歩かないようにしましょう。
●単独行動はせず、ガイドを雇うか、団体(必ず熟練者が含まれていること)で行動しましょう。
●天候が安定しているようでも、急変した場合に備え、出発時に十分な身支度や装備、食料などを用意しましよう。
●高地では、朝晩大変冷え込むので地面が凍結し、滑りやすくなっているので歩行には十分気をつけてください。
●無理な登山スケジュールは絶対に止めることです。(急激な高度の上昇が高山病を引き起こし、無理なスケジュールが無理な行動を招いてしまいます)
●登山、トレッキングをする場合は、必ず登山者名簿に記名し、第三者にも自分の行動が把握できるようにしましょう。

海や川での事故(海水浴、マリン・スポーツ、川下り)

海での事故

ビーチでの海水浴だけでなく、シュノーケリング、スキューバダイビング、ジェットスキーなどのマリン・スポーツを海外で楽しむ人が増えています。海外のリゾート地などでは、日本では未経験の人(経験の少ない人)も、これらのスポーツを気楽に楽しめる環境にあるだけに、不慮の事故に巻き込まれるケースが多く発生しています。 透明度の高い海、白く美しいビーチ、見た目は決して危険な海とは見えなくても、水面の上と下の温度差が激しかったり、引き潮が非常に強いといった危険な海はたくさんあります。また一般のビーチにサメが現れ、日本人が被害に遭ったケースもあります。

事例1. スキューバダイビング

十分な事前訓練を受けていなかった日本人女性がスキューバダイビングを楽しんでいたところ、急に海中で気分が悪くなり溺れてしまった。仲間に救助され応急処置を受けたが、数時間後に死亡した。

事例2. 遊泳区域外で海水浴

海水浴を楽しんでいた日本人グループが遊泳区域の外まで泳いでいったところ、急に引き潮が強くなり、一名が溺れ、ライフセーバーが救助に向かったが、岸から遠かったため間に合わず、死亡してしまった。

事例3. ジェットスキー

ジェットスキーをしていた男性が、波に向かってジャンプしようとしていたところ、操作を誤り海に転落し、珊瑚礁に足を強打し足部骨折の重傷を負ってしまった。

●海の状況が急変することもあり、無理、無謀な遊泳、ダイビングなどは危険です。
●遊泳は必ず監視員(ライフセーバー)のいるビーチで行い、監視員の指示には必ず従いましょう。
●海外でダイビングなどマリーンスポーツを楽しむ場合は、日本で十分経験を積み、海外の海で安全に潜水できる技術を身につけておくことが必要です(ライセンスを持っているだけでは危険です)
●経験者であっても深い海に長時間潜ることは控えましょう。(潜水病になる惧れがあります)
●信頼のおける(公的な資格のある)取扱業者、ガイドを選び、ガイドの指示には必ず従うのが基本です。
河川での事故

・オセアニアやカナダなどでは、河川でのカヌーやラフティングなどで川下りを楽しむ日本人も多く見かけます。こうしたアウトドアースポーツを旅行の目玉として用意するパッケージツアー、個人旅行の人が参加できる現地でのツアーなどがあり、体験する機会が増えております。人気のコースでも、川底が浅い、流れが急、岩場が多いなど、初心者には大変難しいものもあります。
・河川の事故では、本人の過失、不注意という旅行者に責任がある場合がほとんどですが、一方でツアーを企画する側が、旅行者の能力、技量を考慮しないで安易に企画したケース、ガイドの指導が十分でなかったなど本人以外の過失に起因する場合もあります。

事例1. ラフティング

急流をラフティングしていた時、大きな岩にぶつかり、その衝撃で一人が川に落ちた。急流のため、救助がままならず、引き上げられた時には意識不明であったが、何とか一命は取り留めた。

事例2. バンジージャンプ

海外でバンジージャンプに挑んだところ、指導員の計算ミスで足に縛っていたゴムが伸び過ぎて川に落下し、重傷を負ってしまった。

●少しでも不安を感じる場合は、危険を伴う行為は控えてください。(特に初心者)
●信頼のおける(公的な資格のある)取扱業者、ガイドを選び、ガイドの指示には必ず従いましょう。
●危険を伴うレジャースポーツを楽しむためには、必ず専用の保険に加入して下さい(保険への加入を義務付けていないところはいくら安くても参加しなことです。

バイクや自転車でのツーリング旅行

バイクや自転車で砂漠地帯や荒涼とした地域をツーリングする旅行者が多くなっていますが、日本国内とは地勢や気候風土が異なるために、日本の常識では考えられないトラブルに遭遇する恐れがあります。
こうした体験旅行を行うには、特別な準備が必要となります。例えば、2泊3日程度の沙漠ツアーでも、非常時の備えを怠ったため、車両事故により一歩間違えば死亡事故となった遭難事件も発生しております。

事例. オセアニアの沙漠地帯でオートバイ

オセアニアの沙漠地帯をオートバイで横断していた旅行者が十分と思われる水をもって出発したものの、途中で転倒し、不足した水を探しているうちに疲労し、脱水症状で瀕死の状態のところを警察に救助された。

●防暑・防寒具・十分な飲料・食糧などの準備に心がける。
●旅行計画は、安全面に配慮した詳細なルートの確認を行い、危険性についても事前に十分な調査をしましょう。(旅行中は計画したルートを安易に変更しないことが大切です)
●ツアーの場合は、使用される車両に飲料水、食料はじめ、地図、コンパスなど非常時の備えがあるか、よく確認することです。連絡用の無線機が備えてあるかなどもチェックし、信頼できるツアー会社を選ぶことが大切です。