海外旅行に出かける際、「パスポート(旅券)は生命の次に大事なもの」といわれています。
それは、外国においてパスポートが単なる「通行証」だけでなく、日本人であることを証明してくれる「公的身分証明書」であり、「国籍証明書」だからです。また、保護要請の役割も果たしてくれるからなのです。パスポートを開きますと、実際に日本国外務大臣の名において、「日本国民である本旅券の所持人を通路故障なく旅行させ、かつ、同人に必要な保護扶助を与えられるよう諸官に要請する」と書かれております。
また、世界のほとんどの国が、外国人の入国、滞在を許可する条件のひとつとして、パスポートの所持・提示を義務づけているのが普通です。もちろん日本も例外ではありません。もしあなたがパスポートを持っていなければ、世界中のどこの国にも入国できないばかりでなく、日本から出国することさえできません。
外国滞在中にも相手側の要望によって、随時パスポートの提示を求められることがあります。こうしたときに、自分が何者であるかを具体的に示し、証明してくれるのがパスポートなのです。所持人の国籍・身元を証明してくれる極めて大切な公文書です。従って、パスポートは、汚したり損傷することのないようキチンと管理することが必要です。(損傷したパスポートは、海外にて出入国を拒否される原因となることがあります)
パスポートの発給後に、例えば結婚などによってその記載内容が変更した場合は、原則として、持っているパスポートを返納した上で、新規発給の申請をしなければなりませんが、具体的な手続きについては、国内にあっては都道府県の各旅券センターあるいは外務省旅券課に、海外にあっては最寄りの日本大使館あるいは日本総領事館にお問い合わせください。
ちなみに、海外における出入国時やトラベラーズ・チェックの換金の際、あるいは国際免許証や日本の免許証との関係で、パスポートに記載の内容(サインといわれる自署も含む)と一致しない場合にはトラブルの原因ともなり得ますので、これを回避するためにも記載内容が変更した場合は、時間の余裕を十分勘案し、新規発給申請をなさることをおすすめします。
パスポートは世界の大多数の国で通用する「通行証」ですが、通常それだけでは外国を旅行することはできません。旅行目的に応じたビザ(査証・VISA)が必要となります。
ビザとは、渡航を希望する国が発給する入国許可証のことです。その国の在外公館が、自国への訪問を希望する申請者に対して、申請人の旅券の有効性、訪問目的、滞在期間、入国の適格性などを審査した上で、訪問させても差支えないと判断した場合に発給する保証の裏書といえます。ビザは、申請した際に提示のパスポートの査証欄に入国目的や有効期間などを明示したスタンプを押したり、シールを張り付けたりします。
ビザには、訪問回数により1回用または数次用、目的により外交・公用・通過・観光・商用・留学・就労などの区別があります。申請は基本的にパスポートや写真、申請書などの必要書類を揃えて、日本にある渡航先国や通過先国の大使館または総領事館へ出向くことになりますが、ビザの種類や区分、その他必要書類は国によって異なりますので、事前に確認が必要です。
ただ、わが国との間で査証免除取極がある国を短期間訪問する場合(留学・就労などを除く)は、ビザが免除されます。
さらに注意を要するのは、パスポートの残存有効期間です。国によっては査証申請時または入国時に、パスポートに一定以上の残存有効期間があることを要求している場合があります。期間が不足していると、その国に渡航できないので注意が必要です。なお、残存有効期間が1年未満であれば、パスポートの切り替えは可能です。
海外でパスポートを紛失したり、盗難にあった場合、まず現地の所轄警察署でパスポートの紛失または盗難の届け出証明書を発給してもらいます。そして、最寄りの日本大使館または日本総領事館に申し出て、パスポート(旅券)の再発給を受けることになります。
その際に備えて、あらかじめ旅券番号、発行年月日などのデータを手帳などに控え、写真も予備を数枚持っていきましょう。また、旅券の番号や発行年月日などの記載部分を含むコピーを持っていると身元証明などで効果的です。日本国内での紛失・盗難も同様で、警察で紛失または盗難届証明書をもらって手続きを行います。なお、海外での再発給には相当の日数がかかることがありますので、旅行日数に余裕のない場合は、ほかの国に立ち寄らずに日本に直行帰国するという条件つきで「帰国のための渡航書」を申請することができます。例外的な措置として、これをパスポート代わりにして帰国することができます。
日本の旅券は、国際社会において信頼性の高い旅券として評価されていますが、それだけに日本の旅券は狙われやすい状況にあります。狙われるというのは、盗まれるということです。
紛失または盗難にあった旅券は、変造されるなどにより犯罪に使用される可能性があります。盗まれたあなたの名前が記載されている旅券が、世界のどこかで他人に使用され、犯罪の手助けをしているケースも考えられます。
・レストランで食事中に置き引きされる。
・ホテルや空港のチェックインの手続き中に置き引きされる。
・現地で仲良くなった人にすすめられた飲食物に睡眠薬が入っていて、気がついた時には旅券や財布など何もかも盗まれていた。
・ホテルマンが部屋に来て、「パスポートのチェックです」と言って、見せたパスポートをもっていったが、そのホテルマンは偽物だった。
犯罪を防止する最良の方法としては、所持人本人が旅券の大切さをよく認識して、旅券の管理を他人任せにせず、キチンと自分自身で管理することが重要です。旅券を提示する必要があっても、提示して見せたらすぐに返却してもらうなど自らの手元から離れるようなことのないように注意が必要です。